抗VEGF薬の硝子体内注射による治療 | 藤嶋眼科クリニック(福岡市早良区 室見の眼科医院)

抗VEGF薬

抗VEGF薬(血管内皮増殖因子阻害薬)の硝子体内注射による治療

加齢黄斑変性や近視性黄斑変性の原因となっている新生血管を退縮させ、糖尿病網膜症、網膜分枝静脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症では黄斑部網膜のむくみ出血を減少させる効果があります。
現在の視力を維持し改善させる効果が期待できます。
視機能を維持するためには、継続的な硝子体内注射治療が必要になります。

加齢黄斑変性症

ものを見るために最も重要な場所は眼底網膜の中心にある黄斑部です。加齢黄斑変性は、この黄斑部網膜に新生血管が生じ、出血やむくみを繰り返す病気です。
治療しないと、0.1以下の視力(社会的失明)にまで視力低下が進行します。生活習慣の変化により、我が国でも近年増加している疾患です。

症状:視野中心部が暗く見えにくい
ゆがんで見える
部分的に視野が欠ける


■黄斑変性症チェックシート

近視性黄斑変性

眼軸長(角膜表面から眼底網膜までの長さ)が27㎜を超えるたいへん近視が強い方に発症します。
単純出血であれば、内服薬などの内科的治療のみで経過観察を行う事もありますが、脈絡膜新生血管を伴う場合は、抗VEGF硝子体内注射治療の適応となります。

糖尿病網膜症

糖尿病は進行すると様々な全身合併症を引き起こしますが特に糖尿病網膜症は成人の主要な失明原因となっています。
病状をコントロールするためには何よりも血糖コントロールが重要です。
症状がなくても網膜症が進行していることもあり定期的な眼底検査が必要です。
網膜症進行防止のための外来治療として、レーザー網膜光凝固治療、黄斑部浮腫による視力低下改善のために抗VEGF硝子体内注射、テノン囊下ステロイド注射を行っています。

症状:視力低下(霧視)、 飛蚊症、ゆがんで見える

網膜分枝静脈閉塞症

網膜内の動静脈交差部において、網膜静脈内に血栓が生じる事によって発症します。
糖尿病網膜症と並び、眼底出血を引き起こす代表的な疾患です。
高血圧による動脈硬化が発症の大きな原因と考えられています。
自然に軽快する例もありますが、初診時より視力低下の症状が強い方は抗VEGF硝子体内注射やテノン囊下注射の適応となります。
虚血性変化が強い場合は抗VEGF硝子体内注射と合わせ、レーザー網膜光凝固治療を行います。

症状:急な眼のかすみ、視力低下
出血したところが黒っぽく見える、など

網膜中心静脈閉塞症

網膜中心静脈内に血栓が生じる事によって発症します。
眼底出血を引き起こす代表的疾患の一つですが、従来の治療では治療抵抗性が強く、新生血管緑内障を発症することもあります。
虚血性変化をともなう症例では抗VEGF硝子体内注射だけでなく、レーザー網膜光凝固術治療も必要になります。

症例の動画映像

超広角走査レーザー検眼鏡による眼底写真です。
光は瞳をとおり眼底にとどきます。ピントの合う眼底中心部を黄斑部と言い、この部分の出血やむくみは視力低下の大きな原因となります。

黄斑浮腫【網膜静脈分枝閉塞症】

三次元網膜光干渉断層計による網膜断層像です。
盛り上がって黒く抜けている部分が網膜内浮腫です。

抗VEGF薬注射後

同一症例の治療1ヶ月後です。
網膜内浮腫が消失しているのがわかります。

黄斑浮腫【網膜中心静脈閉塞症】

三次元網膜光干渉断層計による網膜立体像です。
眼底写真では平面的にしか見えなかった眼底出血も、3D画像では眼底出血により黄斑部網膜が山のように盛り上がっているのがよく分かります。

抗VEGF薬注射後

同一症例の治療2ヶ月後です。
山のように盛り上がっていた浮腫が消失しているのがわかります。

※セルフチェックで診断ができるわけではありません。おかしいなと感じたら、眼科専門医にご相談ください。

抗VEGF薬の全身への影響

血管に作用する薬剤ですので脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが高まる可能性が指摘されていますが、発症頻度は不明とされています。このような既往がある患者様には抗VEGF薬(硝子体内注射)はおすすめしません。

治療のリスク(合併症)

① 治療中および治療後に痛みを生じることがあります。痛みの程度に関しては個人差がありますが、強い痛みを感じられる場合には、痛み止めを処方致します。

② 白目(結膜)に出血が起こることがあります。(結膜下出血)

③ 重篤な合併症として、白内障、緑内障、網膜剥離、眼内炎などを起こす可能性があります。場合によっては失明する恐れのある病態になることもあります。

④ 治療にも関わらず病態が進行した場合には、しかるべき施設での手術、治療等が必要となります。

治療スケジュール

月に一度の治療をまずは3回続けて行います。
その後は眼底の状態や視力回復の具合をみながら治療スケジュールをご案内いたします。

VEGF薬治療費用について

一般 70歳以上
3割負担 1割負担 2割負担 3割負担
片眼 27,000円~52,000円 9,000円~17,500円
(住民税非課税者 8,000円)
18,000円
(住民税非課税者 8,000円)
27,000円~52,000円
両眼 54,000円~104,000円 18,000円~35,000円 36,000円 54,000円~104,000円
両眼(同月内) 54,000円~104,000円 18,000円
(住民税非課税者 8,000円)
18,000円
(住民税非課税者 8,000円)
54,000円~104,000円

※上記の金額はおおよその目安になります。(2022.9.5更新)

高額療養費制度があり、月内のお支払い額には上限があります。
また、各種制度の適用によって窓口でのお支払い額は変わります。

生命保険及び医療保険にご加入の方

当治療は硝子体内注射であって手術治療には該当しません。

よくある質問

加齢黄斑変性症や近視性黄斑変性の原因になっている網膜の新生血管を退縮させる治療です。網膜静脈閉塞症や糖尿病網膜症による黄班浮腫に対しても有効です。
麻酔は点眼麻酔を使用し治療を行います。治療はごく一瞬で、圧迫感と軽い痛みがあります。
来院されてからお帰りいただくまでの所要時間は1時間前後です。
治療は消毒も含め数分で終わりますが、散瞳眼底検査と眼圧検査をいたします。
早ければ翌日に治療効果が認められる方もいらっしゃいます。治療1週間後には、さらに効果を認める方が多く、即効性がある薬です。
治療は多くの場合有効ですが、持続性はありませんので、病状に応じて治療継続が必要になります。初めは1ヶ月ごとに3回実施し、以後は病状や視力の具合を診ながら治療計画を立てていきます。
三次元光干渉断層計で網膜の断層像を撮影し、黄斑部(物を見る中心部分)の状態を診断します。治療前後で網膜の状態を比較し治療効果の判定を行います。
感染予防の目的で、治療前後3日間は抗菌薬を点眼して頂きます。
治療前後に特別な安静は必要ありませんが、治療当日は洗顔、洗髪はできません。お酒も当日より4日間控えてください。
まれではありますが、下記のような重篤な合併症の報告があります。
網膜剥離 硝子体出血 緑内障 白内障 眼内炎
これらの合併症に対しては万全の処置を講じますが、非常にまれに失明に至る可能性もあります。
※心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まるという報告もあります。